oneself 前編
奈美は一通り話して気が済んだのか、シャワーを浴びに行った。


あたしはその間、何度も携帯を開いては、電源をいれようと試みた。


でも、無駄な努力だった。


結局それ以降、奈美の口からその話が出る事はなかった。


あたしもシャワーを借り、布団に寝転がりながら、将来の夢について語る。


同じ夢を持つ二人。


だからこそ、今までで誰に話した時よりも、その時間は充実していた。


あたし達は飽きる事なく話し続け、時計の針が3時を指した頃、ようやく眠りについた。


夢を見た。


あたしは夢だった、介護の職に就いていて。


周りにはあたしを囲む、沢山の人達がいた。


それを少し淋しそうに見つめる哲平が、あたしに背中を向けて歩きだした。


「どこに行くの?」


振り返って、少し悲しい顔で微笑んだ哲平。


そして、何も言わずにまた歩き出した哲平の姿は、やがて見えなくなった。


哲平…?




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