oneself 前編
次の朝。


奈美に頼んでセットしてもらっていた目覚まし時計が、けたたましく鳴り響く。


午前9時。


後味の悪い夢を見て、何となく気分が沈んだまま、体を起こした。


隣でまだ眠たそうな顔をしている奈美に気を使って、さっさと着替えだけ済ませると、急いで奈美の家を後にした。


今から一度家に帰るまでに、30分ほど。


その後出かける準備をするのに、1時間ほど。


たいていお昼過ぎから哲平とは会っているので、十分に間に合う時間だ。


あたしは比較的空いている電車のシートに腰をおろした。


今も鮮明に思い浮かぶ、今日の朝の夢。


あれは一体、何だったのだろう。


哲平の身に、何かあったの?


正夢になんか、ならないよね?


不安な気分を取り払うように、大きく吸った息を、一気に吐き出した。


大丈夫。


あれはただの夢だから…




< 98 / 245 >

この作品をシェア

pagetop