あの日失くした星空に、君を映して。
山道の方に逸れる前のバス停で降りて、坂道を下る。
細い道だけれど、まだまだ迷うほどじゃないんだよね。
「綺麗だねー」
民家の間から見える海を目を見て目を輝かせているけれど、まだまだなんだからね。
「きっとビックリするよ」
「えーそんなに?」
真っ白な砂浜に立つだけで走り出したくなるあの感じ。
家に荷物を置いて、2人がお母さんにあいさつし終えたあと、早速海に向かった。
通り慣れた路地を抜けて、途中の石垣に寝そべる白猫に声をかけて
開けた視界の先は、いつも通り…いやいつも以上に澄み切った青い海。
「海だーー!!」
そう言って砂浜を駆け出したのは佐山さん。
その後を追って走り出した高橋さんを見て、嬉しくなる。
自分が気にいっている場所で誰かが喜んでくれるのって、すごく嬉しいことなんだって初めて気付いた。