あの日失くした星空に、君を映して。


どうしてこんなにも優しく感じるんだろう。


深影が教えてくれたものや、見せてくれたもの、呼んでくれる名前。


“好き”が込み上げて、泣いてしまいそう。


「…んっ」


力の抜けた一瞬を見計らって、深影が唇を重ねた。


工藤くんの唇は冷たかったのに、深影の唇はあったかい。


熱があるせい?


ううん、それだけじゃない。


きっと、私の唇も熱い。


反射的に逃げようとすると引き寄せられて、深くなるにつれて呼吸が奪われる。


苦しいのは呼吸だけじゃなくて、心もだ。


苦しいくらいに胸が満たされて、いつの間にか頭の中をチラついていた工藤くんはいなくなっていた。


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