あの日失くした星空に、君を映して。


「あいつ…」


「ねえ、深影ってば」


「うるさい」


「んぐっ」


ムニッと片手で両頬をつまんで圧迫される。


知ってるんだからね。


深影は自分に都合が悪くなると絶対に「うるさい」って言うこと。


あとちょっと手が出ることも。


負けないように両手でガッシリと深影の手を掴む。


ムッとした顔でやり返してくる深影と廊下のド真ん中で掴み合っていると、呆れた声が聞こえてきた。


「あんたら…何しとんの」


見たことがないくらいにドン引きしたような顔の風香。


と、頬に青あざを残して、左目に眼帯をした工藤くん。


頬のあざは深影にもあるけれど、眼帯を見た瞬間足が震えた。


しっかりと足に力を入れて耐えたけれど、油断すると全身が震えてしまいそうだ。


目を逸らすよりも前に、大きな背中が私の視界を覆った。


< 298 / 427 >

この作品をシェア

pagetop