あの日失くした星空に、君を映して。


私が工藤くんに抱く感情は友人としてのものでしかないけれど。


風香が好きな工藤くんは、とっても素敵な人だと思うよ。


「だから…ごめんね」


言いたいことを言い切って、どこか清々しい気持ちで工藤くんの方を向く。


どこまでも続く空と海だけを映していた左眼に工藤くんを映す。


瞳に吸い込まれていく。


初めて見る、柔らかく笑う工藤くん。


一瞬、その瞳が切なげに細められて


「うん」


って、言ったんだ。


必要以上の言葉を工藤くんは発しない。


それが工藤くんらしくて、今もそうであってくれることが嬉しかった。


「うん」って一言の中に込められたものがとても大きいことを知ってる。


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