あの日失くした星空に、君を映して。


「男2人はまだ出らんの…もうのぼせそう」


「風香先に出てたら?顔真っ赤だよ」


「うー…そうする。鏡華もあんまり長湯せんので」


フラフラしながら脱衣所に上がる風香を見送って、グッと体を伸ばす。


まだ数えるくらいしか来ていないけれど、銭湯はお気に入りだ。


今日は時間帯がズレたから人が少ないけれど、おばさん達が多い夕方に来ると話が弾む。


のぼせやすい風香は先に上がっちゃうことが多いんだけれどね。


「んで、深影はあの子とどうなんよ。ほら、隣の家の子!戸塚さんとこの娘さんやろ?」


大きな壁を挟んだ男湯の方から低い声がする。


ガラガラとした独特の響きは仕事終わりに来ることが多いおじさん達。


戸塚さんの娘って呼んでるってことは、お母さんが手伝ってるお店のお客さんかな。


そういえば…お母さん最近ずっと帰ってくるのが遅い。


夜遅くに帰ってくることが多くなったし、朝早くに出ていくこともある。


睡眠はしっかり取ってるって言ってたし、見る分には元気そうなんだけれど


様子が変っていうか…明るすぎるのも気になる。


疲れてるはずなのにいつもニコニコしてるんだよね。


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