あの日失くした星空に、君を映して。


肩までしっかり湯船に浸かって数字を数えながら、聞き耳を立てる。


「どうもなにも…順調に決まっとんやろ」


ぶっきらぼうに深影がそう言った瞬間、男湯からは歓声が上がる。


茶化すようにが飛び交う会話が耳に入り込んできて、だんだんと別の意味で頬が熱くなってきた。


「よかったなぁ!戸塚さんも最近大谷田さんといい感じやしな!」


……大谷田さん…?


ふと拾ったおじさんの一言が耳にとまる。


誰、大谷田さんって。


近所にそんな人いないし、お母さんそんな話してたっけ?


いい感じってそういうことだよね。


娘に話したりはしないものなのかな。


お母さんが最近妙に嬉しそうなのは大谷田さんって人が理由なんだろうか。


疑問が1つ解消されたのに、私の心にはモヤモヤしたものが残る。


ただでさえ沸騰しそうな頭で考えられるはずもなく、67まで数えたところで湯船から出た。


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