あの日失くした星空に、君を映して。


*

「っ…はぁ…」


薄着のまま家を飛び出して、たどり着いたのは高台。


ニシロ階段を駆け上がった記憶も曖昧で、いつの間にかここにいたような気がする。


寒い、けれどそれだけじゃなくて。


背筋を冷たいものが伝っていく。


背中に聞こえたお母さんの声を無視して飛び出してきた。


所謂、現実逃避。


無意味だってわかってるのにこうしてしまうのが人間なのかな。


モヤのかかる高台の柵の所に立って、広い空と海を見渡す。


いつか、深影が言ってた。


『今日の空は明日にはない』って。


なら、昨日の空も今日にはないんだ。


当たり前のことだけれど、昨日とは全然違う景色を見せる空はとても綺麗。


キラリと景色が輝いた気がした。


ううん、違う。


じわりと滲む涙が景色を歪ませて、輝かせているんだ。


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