あの日失くした星空に、君を映して。


いい人だっていうのはお母さんを見ていればわかる。


とりあえず私と大谷田さんが対面してから話を進めたいってことだけれど…


「…無理だよ」


会いたくない。


…行きたくない。


だってまだここに来て半年も経ってないんだよ。


前の町ほどは離れてないとはいえ、簡単に会える距離じゃなくなるのは確かだ。


深影と、風香と工藤くんと美里さんに。


ずっとここにいられるって信じきっていたから、そんな可能性全然考えてなかった。


9月の最初の週に大谷田さんと一度会ってみないかって話だから、この先どうなるのか自分でもわからない。


眼のことも寝不足のことも見抜かれてるから、深影にだけは悟られないようにしないといけない。


自分とお母さんのことだから。


それなのに、何でこんな時でさえ思い浮かぶのは深影なんだろう…


傍にいたいって気持ちだけじゃ足りないことだってあるんだ。


自分の幼さを痛感して、ギリッと唇を噛む。


自分の幸せで人の幸せを測ろうなんて、私馬鹿だ。


何が一番大切なことなのか…


ちゃんと考えないと。


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