あの日失くした星空に、君を映して。


11月。


中間テストを終えて落ち着いた雰囲気が戻ってきた頃、私は引っ越しを明日に控えていた。


もともとそんなに荷物は多くなかったけれど、更にガランとした部屋を見渡すと少し寂しくなる。


「大谷田さん、そろそろ来るって?」


慌ただしく台所と居間を行き来するお母さんに声をかけたら、お母さんは足を止めずに言う。


「んー、そろそろだと思うけど…どうだろう」


さっきから「そろそろ」ばっかりだよお母さん。


せっかくだからって、今日は大谷田さんと翔太くんが家に来てくれるんだ。


そのせいかいつもより気合いの入ったお母さんの手料理がテーブルに並んでいる。


つまみ食いを我慢するの大変なんだからね。


まあ、お母さんが作り置きしてくれていたご飯とか自分で作ったものばかり食べていたから、楽しみで仕方がないのは私だ。


早く来てくれないかな。


そわそわしながら立ったり座ったりを繰り返していると、ちょうどいいタイミングで玄関のドアが叩かれた。


「私行くね」


もうお腹空いて堪えられないよ。


ギシギシと軋む廊下を足早に歩いて、玄関の戸を開ける。


「………深影?」


てっきり大谷田さんと翔太くんがいると思っていたのに、目の前につっ立っているのは深影。


「どうしたの?」


最後だからと風香が家に呼んでくれて、つい2時間前まで皆で一緒にいたのに。


また明日ねって言って別れたよね…?


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