あの日失くした星空に、君を映して。
潮の匂いが強くなって、深影が見ていないと知りながらもブンブンと首を横に振る。
「……大丈夫」
小さく深影が呟いた。
「深影………」
堤防越しに見える海。
日が沈んで暗くなった空と海の境界線が黒く染まっていて、私でさえ一瞬怖いと思った。
「大丈夫?」って声をかけようとした時、また深影が歩き出した。
本当に行くの……?
無理をしているのがわかっているのに、深影の意図がわからなくて、泣きそうになる。
唇を引き結んで泣くのだけは堪えた。
砂浜を踏む音と感触がやけにリアルに靴裏や耳に伝わってきて、ぞくりと身震いをしてしまう。
私の感覚よりもずっと鮮明に深影は感じ取っているんだって思うと緊張が止まらない。
張り詰めた空気が海風に揺らぐことはなくて、歩みを止めない深影について行くことしかできなかった。