あの日失くした星空に、君を映して。


*

バスを降りると懐かしい潮の匂いがした。


帰ってきたんだ。


海沿いのバス停からすぐに海岸に降りたくなるのをぐっと我慢する。


とりあえず、家に行かないと。


防波堤沿いを抜けて、細い路地に入る。


最初にこの町に来た頃は何度も道を間違えていたのに、今となっては足が勝手に進むなんて、自分でも感心だ。


「まっさか鏡華と大学が同じとは思わんかったわー」


「私もだよ。すごい偶然だね」


工藤くんが荷物を持ってくれているから、私と風香は並んで歩く。


だいぶ狭いんだけれど、この方が話しやすいもんね。


「4月からは鏡華と一緒に大学に行けるんやな」


そう、実は私と風香は進学先の大学が一緒。


風香は短大なのだけれど、同じキャンパス内だから一緒に通おうって話をしていたんだ。


それで、お母さんと大谷田さんにきちんと許しをもらって、この町から通ってもいいことになった。


1人暮らし…になるんだけれど、ちょっと違う感じかな。


だって…


「深影と一緒に住むんやろ?」


「ちょ、違うよ!ただ私が前の家に戻るだけで…」


前の家が空家のままだったから、また借りるようにしただけだ。


一緒に住むわけじゃない。


それに深影は隣町に就職が決まったから、きっと忙しくて余裕ばかりじゃないと思う。


まあ…多分、深影のことだからしょっちゅう来るんだろうけれど。


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