あの日失くした星空に、君を映して。


一緒に住むだなんて、もし大谷田さんに知られたらとんでもないことになる。


引っ越し先で慣れるうちに、大谷田さんはいきなりお父さんっぽくなった。


もともと翔太くんっていう息子がいるからっていうのもあるんだろうけれどね。


『深影くんと何かあったらすぐに連れて帰る』


って、家を出る時にしっかり釘を刺された。


呼び方も大谷田さんのままで、本当のお父さんのようには接することができないけれど、いい関係を築けてはいるんだと思う。


それがもし、万が一のことが起きたら、私じゃなくて深影が危ない。


真剣な大谷田さんの顔を思い出して、気を引き締める。


いくら親の目がないからって、私も浮かれてちゃダメだよね。


坂道をのぼって見えてきたニシロ階段。


高台に行きたいけれど、先に荷物を置いて深影の様子を見に行かないと。


そう思って家へと続く小道に逸れようとした時、ぐいっと手を引っ張られた。


「ちょっとちょっと、どこ行きよんの」


「へ?家こっちだよ?」


ていうか、上にはニシロ階段と高台しかないじゃん。


「いいから、あんまり待たせるとあたしと幸久が文句言われるやろ」


「いや、だから何が…」


意味がわからないまま、ニシロ階段まで背中を押される。


「荷物は置いとくけん、行っといで」


「私先に深影に会いたいんだけど…」


「いいからいいから」


急かすように背中を叩かれて、1段目に足をかける。


何なんだろう、教えてくれたっていいのに。


下を見ると風香がニヤニヤしながら手を振っていた。


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