あの日失くした星空に、君を映して。
ポツポツと夜空に浮かぶ星を、窓から見上げる。
今日は雲が厚いから見える星は決して多くはないけれど、その中でも目映い輝きを放つ星が何粒かある。
こんな星、昔行った天文台でしか見たことがない。
海風の香る、山の上。
春休み真っ只中の4月1日。
私は今日、この町にやって来た。
前に住んでいた所から車で8時間ほどだろうか。
寝ている間に到着したのはど田舎にも等しい海と山しかないどこか寂しい雰囲気の町だった。
民家は相当数あるけれど、町を行き交うのはお年寄りばかり。
昼間に散歩をした時、色んな人に捕まって疲れた。
正直、何と言ってるかわからない言葉ばかりで。
多分、方言というほどじゃない、どちらかというと標準語には近いのだろうけれど、早口だし滑舌が悪くて聞き取れなかった。
適当に返事をするわけにもいかなくて、精一杯耳を傾け続けてもうクタクタだ。