あの日失くした星空に、君を映して。


*

放課後、全員分の化学のノートが集まったかを確認する佐山さんの机の横に立つ。


「あの…佐山さんこれ…」


クラス名簿のコピーにチェックを入れる佐山さんにノートを差し出す。


多分、私で最後なんだろうな。


積み重ねられた残り少しのノートタワーの分と、私のノートをカウントすれば、全員分が揃うはず。


「あ、ありがとー戸塚さん」


何でありがとうなんだろう。


化学の係が佐山さんとはいえ、預けるのは私なのだから、お礼を言うのはこっちだと思う。


もう佐山さんと私の他には誰もいない教室に、シャーペンの音だけが響く。


気まずくなる前に佐山さんの席を離れて、自分の荷物をカバンに詰める。


佐山さんの友達、もう帰っちゃったのかな。


いくらノートのチェックがあるからって、揃っているか確認して先生に持っていくだけなのに、待っててあげないんだ。


案外薄情な人達なんだね。


何か用事があるとかかもしれないけれど、3人揃ってそれはないだろうし。


< 5 / 427 >

この作品をシェア

pagetop