あの日失くした星空に、君を映して。


「戸塚鏡華です。よろしくお願いします」


ペコ、と頭を下げる。


こ、これでいいのかな?


好きな食べ物とか言った方がいい?


「お前な…もう少し何か言え」


うう……やっぱりか。


呆れながらも、はい終了とは言ってくれない先生が恨めしい。


私さっき廊下で言ったのに。


自己紹介とか苦手だから早く済ませてくださいって。


それを…涼しい顔でアクビなんてしてる先生。


「え…っと…その…」


無理無理無理無理!


内心めちゃくちゃ焦りながら、うーんとか、えーとかをボソボソと言ううちに


「はーい!質問!彼氏は?」


教壇の目の前の席の、坊主頭の男の子がニカッと笑う。


「か、彼氏…?いないよ」


恋とかそんなの、全く縁がない話だし。


告白は…中学の時に何度かされたけれど。高校に入ってからは全然。


もちろん彼氏なんてできたこともない。


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