あの日失くした星空に、君を映して。
ポンポンとシャトルを打ち合うだけだけだったやり取りが、まるで撃ち合いのようになってきた頃。
「疲れた?」
「…うん、ちょっと」
腕まくりをして白熱した戦いを繰り広げる工藤くんと風香を見ながら、ぼんやりとする私の横に深影が座った。
「慣れてないけんな…明日も学校なんに、ごめんな」
「大丈夫だよ。楽しかった」
ここ最近通いつめて見ていた夕焼け空。
深影と見るのは初めてだ。
「ゆ、幸久ぁ…あんたいい加減落としてよ!」
「嫌だね」
まだまだ終わりそうにないバドミントン勝負の行方を追いながらも視線ははるか頭上。
それに気付いた深影も同じように空を見上げた。
「綺麗だね…」
深影が教えてくれたこの空が私はとても好きになった。
「保証するって言ったやろ」
「うん、信じてなかった」
夜空よりも綺麗だと思えるものがあったなんて。
夜空も好きだけれど、同じくらいにこの夕焼け空も好きだ。
赤から青に染まって、黒になっていく瞬間を見逃したくなくて、瞬きを忘れるほど。
それに、なにより…
「ほら、一番星」
深影の視線の先、キラリと光る1つの星。
グルリと空を見渡して、確かにそれが一番星であることを知る。
一番星を見つけるのが私の楽しみなのに。
深影に先に見つけられてしまった。