あの日失くした星空に、君を映して。


「…ふっ……」


なんで思い出してしまうんだろう。


名前を呼ばれるたびに蘇る思い出を押さえることには慣れたはずなのに。


なんで今頃…


止まらない涙に、腕をグッと目に押しあてる。


なんだろう、これ。


左目からは確かに涙が出ているのに。


右目からは涙が全然出てない。


そこであることを思い出した。


大岩先生が言っていたんだ。


私の眼は眼球破裂だけじゃなくて涙管損傷もしているから、涙が出ることがないって。


いくら義眼をはめて普通の目を装ったって、この眼はもう眼としての機能を失っている。


物を見ることができなくても、光を通すことができなくても。


せめて涙が出てくれたら、どんなによかったか。


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