あの日失くした星空に、君を映して。


*

すっかり東高の雰囲気にも慣れてきた5月の始まり。


「雨だ……」


梅雨入りにはまだ全然早いのに、珍しく大雨が降っている。


どうしよう…今日傘持ってきてないんだよね。


学校に行く途中で近所のおばあちゃんが、今日は雨が降りそうだとか言っていたけれど、本当だったんだ。


天気予報よりも地元の人の勘の方が当たる。


夕立ちが来るとか、潮風が強くなるとか


そういうの全部当たっちゃうんだもん。


「あっちゃー…雨かあ」


「風香、傘は?」


「忘れちゃったんよね」


5時間目の授業が終わった段階でもこの大雨。


もっとひどくなりそうなのに、お互いに傘がない。


「深影は傘持ってる?」


午後の授業が始まってからずっと机に伏して眠っていた深影に訊くと、首を横に振られた。


「忘れた。じーちゃんが言ってたけど」


なんでおじいちゃんが言ってくれたのに忘れるの。


「幸久も持ってないやろうし、4人で濡れて帰るしかねぇわな」


大きなアクビをしながら、何でもないことみたいに言うけれど


学校から私と深影の家まで20分。


風香は割と近いけれど、工藤くんの家は海に近いからもっとかかる。


もしかしたら、風邪を引くかもしれない。


5月だってまだまだ寒い日があるから。


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