あの日失くした星空に、君を映して。


「工藤くん!春霞屋ってどこ!?」


大きな雨音に負けないくらい大きな声で言わないと聞こえないよね。


雨に濡れるといけないから4人ともカバンを学校に置いてきた。


もちろん携帯も。


連絡を取る人なんて佐山さんと高橋さんと…あと大岩先生がたまに電話してくれるくらいだから、問題ないかなって。


「そこを左に曲がって、階段を下ったところの横」


「え……っと…何て言ったの?」


雨音に遮られて全然聞こえなかった。


「はあ……」


た、ため息?


なんでそんなのだけ拾っちゃうんだろう私の耳は。


とりあえず右に曲がろうとした時、握ったままだった手を逆に引っ張られた。


「こっち」


「うわわ…待って!工藤くん!」


転ける!滑る!


引っ張られた勢いでツルッとローファーが滑る。


転ける、そう思ってギュッと目をつぶったけれど…


あれ…?痛くない?


「危なっかしいね」


胸とお腹の辺りに回された、シャツから透けたたくましい腕。


抱きしめられたんだ…


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