桜舞う夜
翌朝も、私は同じようにカフェに居た。
とても暖かな日差しに、気分がとても良かったのだけれど。
カフェのレジはいつもと違っていて、癒しをくれる彼の姿がない。
それだけで一気に気持ちが沈んでしまっていた。
見慣れない店員さんの笑顔と挨拶に、なんとか笑ってみせる。
いつものですか?
そう訊いてくれる彼がいないので、久しぶりにレジでコーヒーの名前を口にした。
まともな注文をしただけなのだけれど、いつものですね。と訊かれないだけで注文する声が弱々しく小さくなってしまう。
彼がレジに居ないだけで、こんなにも気持ちが下がっていくなんて。
自分でもあからさますぎるテンションの落ち具合に、思わず小さく息をついてしまった。
「奥でお待ちください」
言われるままに奥に行ってから、あっと思う。
熱めにしてください、とお願いするのを忘れてしまったんだ。
彼が居ないだけで、なんだか全てがうまく回らない。
熱いコーヒーを諦めて、奥のカウンターで出来上がるのを待っていた。