咲かない花
「ヒッシー、二軒目行くか」
「ううん。旅行の準備もあるから、もう帰る」
「あー楽しかったー。二宮さーん、一緒に帰りましょー。方向同じですよね?」

一体、どこまでが「酔ったフリ」なんだろう。
東内さんの熱演ぶりには脱帽ものだわと感心しつつ、「じゃあ、おつかれさまでした」と言って、駅に向かって2・3歩歩き始めたとき。

不意に大きな手で腕を軽く掴まれた。

「二宮く・・・」
「家帰っても、スマホ、オンにしといてください」

えっ?なんでそんな・・・耳元でコショコショと囁くの?
おかげで酔いがぶり返したみたいに、鼓動がドキドキ早まったんだけど!

「え、と。なんで・・」
「電話するから」
「あ・・」
「いい?」
「う・・・ん」

かろうじて返事をすると、二宮くんはやっと手を離してくれて。
何事もなかったかのように、東内さんや大野くんたちと一緒に歩いて行った。


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