ビターチョコレート!
あー、つらいなぁ。
ちょっと熱上がったかも。
意識が朦朧としてると、ドアをノックする音が聞こえた。
伊織くんがお粥を持ってきてくれた。
よっこいしょ、と体を半分起こした。
伊織くんはテーブルにお粥を置くと、私の肩に自分が着ていたカーディガンを掛けてくれた。
「口開けて?」
言われた通り口を開ける私。
お粥をスプーンですくって、ふぅふぅと冷まして私の口へ入れた。
「…どう?うまい??」
まさか、あの伊織くんがこんなことする訳ない!!!
熱で幻覚が見えてるのかな??
これは現実なのか、それとも幻覚なのか考えているだけで頭はパニックだ。
知らぬ間に私はお粥を平らげていたみたいだった。
「…はい、薬」
伊織くんは、水の入ったグラスと薬を私に差し出した。
「暖かくして寝ろよ。用があったら呼んで?」
「会社は?」
「休んだ。風邪でつらそうなのに、無視して会社なんて行けるかよ」
伊織くんは、ぶっきらぼうに言うと私に布団を掛けた。
「ゆっくり休めよ?」
そう言うと、部屋を出た。
ずるいよ………
伊織くんの優しさが苦しい………。
私バカだから、もしかしたら……??なんて期待しちゃうじゃん。
私ばかりドキドキしてる。
私ばかり伊織くんを好きになっちゃう。
伊織くんってずるいね。
「…伊織くんのにおい」
伊織くんが残していったカーディガン。
大好きなにおいが私を落ち着かせる。
私は、うとうと眠り始めた。