ビターチョコレート!
「なんか最近楽しそうだな。いいことでもあった?」
伊織くんが私に言った。
ここ最近ずっと楽しくて、嬉しくて頬が緩みっぱなしの私。
こうやって、少しでも会話ができるようになって本当に幸せ。
今、この瞬間もニヤニヤがとまらない。
「ん?あったよ。すごくすごくいいこと」
『こうやってあなたと話すのが幸せ』なんて言えないけれど。
「そっか。俺も最近いいことあって幸せ」
すごく幸せそうに微笑む伊織くん。
こんな優しくきれいに微笑む伊織くんは初めて見た。
どんないいことなのか気になる。
好きな人でもいるのかな。
その人といいことがあったの?
私は知っている。
最近、伊織くんは誰かと楽しそうに電話していること。
よく笑い声なんかも聞こえてこて、私と話すよりもずっとずっと楽しそう。
時折、『リカ』という名前が出てくる。
その『リカ』は誰なの??
伊織くんが好きな人?
私の心に雲がかかってきた。
泣きたいような、喚きたいような不思議な衝動に駆られる。
この気持ちを話せたらどれだけ楽だろうか。
吐き出せたらどれだけ楽だろうか。
「ちょっと夕飯の買い物に行ってくるね」
にっこり微笑んで伊織くんに言った。
苦しくて苦しくてその場から逃げ出した。
私ちゃんと笑えてたかな?
気づかれてないかな。
あとどれくらい一緒に居れる??
捨てられたらどこへ行こう。
そんなことが私の頭の中をぐるぐるしていた。