透明ガール
優しいことを冬華に言われるのはとても珍しい。
ついつい頰が緩む。
と、いきなり冬華の細く長い腕がすっとのびて、手のひらを額にあてられた。
突然のことに動きが止まると、
「やっぱり熱い。熱あるじゃない」
「えっ?」
この部屋は電気が若干暗く、隣にいる人の表情も分かりずらい筈だ。
なんで気が付いたの?と尋ねる前に、冬華が答えた。
「榎本に、沙奈の体調がよくないみたいだから注意して見てて欲しいって言われたのよ」
まさか熱があるとは思わなかったけど、と呆れてため息をついた。
榎本、気にしてくれてたんだ…
いらぬ心配をかけてしまった。
冬華にも、榎本にも。
「どうする?先に帰る?」
「んー…、最後までいたい…駄目?」
せっかくの打ち上げなのに、水を差したくない。