透明ガール
偶然の出会い
辺りは暗く肌寒いのに、背中には温もりを感じる。
重いと自分では言っていたがそんなことは無く、驚く程に軽い。
頰には細く柔らかい髪が触れる。
耳もとでは荒い呼吸が聞こえ、いかにも辛そうだ。
言葉を発さずに歩いていると、突然か細い声で桂木が呟いた。
「あのね…私、最初は榎本と…関わりたくなかったの」
「…え?」
「かっこよくて、皆んなに好かれてる榎本が、苦手だったの…。ごめんなさい」
熱のせいなのか、桂木の声は今にも泣いてしまいそうに聞こえる。