透明ガール
その笑顔は優しく、和やかだった。
「沙奈と同じクラスなの?」
「はい。榎本遥と言います」
「遥くんね?沙奈を送ってくれてありがとう。暗いから、気を付けて帰ってね」
心配してくれる姿はなんていうか、母親みたいだ。
きっと、
いいお姉さんなのだろう。
「はい。じゃあ、帰ります。桂木またな」
振り返ってそう言うと、桂木は熱で紅くなった顔でぎこちなく微笑んだ。
「うん、…ばいばい」
そう言って小さく手をふる。
この様子だったらすぐによくなるだろう。
お姉さんに頭をさげ、暗い、来た道の方向へ向かう。
もし、
俺がそのときに振り返っていれば。
もっと早くに、気が付けた筈だ。
沙奈の気持ちに