透明ガール
あの人…って、桂木のお姉さんのことだよな?
「榎本の為に言ってるんじゃない。沙奈の為よ」
桂木の為?
お姉さんの話をしないことが桂木の為になるなんて、意味が分からない。
あんなに仲が良さそうで、優しいお姉さんなのに。
胸の辺りがむかむかする。
「…これ以上、深く入ってこないで。苦しむのは沙奈なんだから。」
突き放したようにそう言った伊藤。
しかし、その目は悲しみで淀んでいるように見える。
心の奥を覗かせたくないのだろうか。
言葉を挟む余地もなく、素早く体の向きを変えて教室に向かって行った。
榎本は何故か1人廊下に取り残されてしまった。
とりあえず伊藤の話を考えてみる。
しかしさっぱり分からない。