ジャンヌ・ダルクと女騎士
5月6日
「国王陛下に任命された総司令官か何だか知らんが、実際の戦争経験は、俺の方が上だ。グダグダ言わずに、俺の言うことを聞いときゃいいんだよ、お嬢ちゃんは!」
年上で、貫録もある男にそう怒鳴られると、流石にジャンヌもそれ以上のことは言えず、結局、一同は一度、オルレアンに戻ることになったのだった。
「………」
それでも何かを感じていたのか、ジャンヌは馬上で、しきりに周囲を見回した。
「ジャンヌ?」
そんな彼女に、兄のピエールが近寄って声をかけた。
彼は徒歩で、彼女の馬の手綱を握っていたので、従者のようだったが。
「マリア様が私に攻めよとおっしゃったの。だから、何かある気がして……」
「今度は聖母様か?」
聖女マルグリットや大天使ミカエルに続き、聖母マリアの名まで出て来たことに、流石のピエールも呆れた表情になった時だった。
「敵襲だ! イギリス軍が戻って来たぞ!」
前方でそう叫ぶ声がしたのは。
「逃げてはなりません! 此処は、我らの土地! 力を合わせて、この地を取り戻すのです! 神もそれを望んでおられます!」
ジャンヌはそう叫ぶと、サン・ルー砦の時と同じように旗を高々と掲げ、前方に走って行ったのだった。
「そ、そうだ! 我らには、乙女がいる! この敵襲を予測していた乙女がいる! イギリス軍など、この地から追い出してくれるわ!」
それを見た兵士の一人がそう叫ぶと、彼の近くにいた者もそれに続いた。
そして――彼らはサン・ルー砦に続き、オーギュスタン砦までも奪い取ることに成功したのだった。
「乙女が、又も勝ったらしいぞ」
先日からのサン・ルー砦に続き、予想外にもオーギュスタン砦まで落としてしまったので、オルレアンからパンや葡萄酒を船で輸送することになったのだが、その最中、それを手伝った町の人々は、口々にそう噂した。
「あの包囲網の中、このオルレアンに入城したことといい、この結果といい、あの乙女には本当に神の御加護があるのかもしれん」
「ということは、この町が本当に解放されるかもしれねぇってことか?」
「このままいけば、ありえないこともなかろう?」
そう言いあう男達の表情は明るく、希望に満ちていた。
年上で、貫録もある男にそう怒鳴られると、流石にジャンヌもそれ以上のことは言えず、結局、一同は一度、オルレアンに戻ることになったのだった。
「………」
それでも何かを感じていたのか、ジャンヌは馬上で、しきりに周囲を見回した。
「ジャンヌ?」
そんな彼女に、兄のピエールが近寄って声をかけた。
彼は徒歩で、彼女の馬の手綱を握っていたので、従者のようだったが。
「マリア様が私に攻めよとおっしゃったの。だから、何かある気がして……」
「今度は聖母様か?」
聖女マルグリットや大天使ミカエルに続き、聖母マリアの名まで出て来たことに、流石のピエールも呆れた表情になった時だった。
「敵襲だ! イギリス軍が戻って来たぞ!」
前方でそう叫ぶ声がしたのは。
「逃げてはなりません! 此処は、我らの土地! 力を合わせて、この地を取り戻すのです! 神もそれを望んでおられます!」
ジャンヌはそう叫ぶと、サン・ルー砦の時と同じように旗を高々と掲げ、前方に走って行ったのだった。
「そ、そうだ! 我らには、乙女がいる! この敵襲を予測していた乙女がいる! イギリス軍など、この地から追い出してくれるわ!」
それを見た兵士の一人がそう叫ぶと、彼の近くにいた者もそれに続いた。
そして――彼らはサン・ルー砦に続き、オーギュスタン砦までも奪い取ることに成功したのだった。
「乙女が、又も勝ったらしいぞ」
先日からのサン・ルー砦に続き、予想外にもオーギュスタン砦まで落としてしまったので、オルレアンからパンや葡萄酒を船で輸送することになったのだが、その最中、それを手伝った町の人々は、口々にそう噂した。
「あの包囲網の中、このオルレアンに入城したことといい、この結果といい、あの乙女には本当に神の御加護があるのかもしれん」
「ということは、この町が本当に解放されるかもしれねぇってことか?」
「このままいけば、ありえないこともなかろう?」
そう言いあう男達の表情は明るく、希望に満ちていた。