ジャンヌ・ダルクと女騎士
初めて……
「初めてじゃないとか?」
バートのその問いに、シモーヌの瞳が悪戯っぽく光った。
「そんなに気になります?」
「いや、その……俺が関わった手前、やっぱり多少は気になるのは当然だし、君が大好きだというその兄上と年も5歳違いだというのなら、兄のような気持ちで見守らないと……」
「兄……ですか?」
バートの顔を覗きこみながらそう聞き返すシモーヌの顔には、落胆の色が見てとれた。
「そりゃそうだろう。俺達はまだ会ったばかりだし……」
「ジョルジュさんはそれでも、態度で好きだって表してくれましたよ?」
少しふくれっ面になりながらシモーヌがそう言うと、バートは困った表情になった。
「君は俺に何を望んでるんだ? ジョルジュみたいな対応か?」
「そこまでいかなくても、私がバートさんを好きでいてもいいって許可してくれたのなら、もう少し優しくしてくれてもいいかなとは思います」
「優しく、か?」
「ええ。妹と思って頂いても構いませんから」
その言葉とは裏腹に、その目には涙が溜まってきていた。
「嘘が下手だな」
バートはそう言いながら、太い指でその涙を拭った。
「だって……しょうがないじゃないですか。ずっと本当の父の代わりに私を引き取って、大事に育ててくれた兄上の役に立てるよう、勉学と剣術等に励んできたんです。恋愛なんて、しようとすら思わなかったんです。まずは、兄上の邪魔にならないようにしなくちゃいけないって、そればかり思っていたから……」
「苦労したんだな……」
そう言うと、バートは優しくシモーヌの頭を撫でた。
それが引き金になってしまったのだろうか。彼女は、彼が横になっているベッドの毛布にしがみついて泣きだしてしまった。
「よしよし。色々、我慢してきたんだな」
「でも……今は……」
そう言うと、シモーヌはゆっくり顔を上げた。
まだ目は赤かったが、涙に濡れたその顔は、とても美しかった。
「我慢したくありません」
「シモーヌ……?」
バートが意味が分からず目を丸くすると、彼女は彼に近付き、そっとその頬にキスをした。
「こいつは……」
「兄妹のキスではないつもりです。慣れていないので、上手く出来なかったと思いますが……」
シモーヌはそう言うと、少し離れ、うつむいた。
「おいおい、俺も男なんだぞ? そんな顔して、そんなこと言われたら、我慢出来るものも出来なくなるぞ?」
バートが困った表情でそう言いながら、シモーヌの頭にポンと手を置くと、彼女は彼を見詰めた。
次の瞬間、彼女は彼に抱き寄せられていた。
「バートさ……」
そう言いかけたその唇をバートの唇が塞いだ。
熱く、身体の内側まで熱を持ったかと思う程、熱いそのくちづけに、シモーヌは思わず目を閉じた。
「マジで、これだけで終われそうにない……」
やっとシモーヌを離したバートが、少し困った表情でそう言ったのは、しばらくしてからのことだった。
シモーヌはといえば、まだ熱を帯びたような表情で、倒れそうになるのを彼の手を握ることで、何とか耐えている様子だった。
「はい……」
「はいってなぁ!」
本当に困ったかのように頭を掻くバートの胸にシモーヌはその顔をうずめて、抱きついた。
「あ、痛かったですか? まだ肋骨、治ってないんですよね?」
「それはまだだが……」
そう言うと、彼はシモーヌの手を取った。
すると、どうやったのか、ころりと彼女が横たわり、気付くとその上にバートが乗っていた。
「何とかなるだろ」
「そうなんですか?」
「誘ったのは、そっちだろ」
「そうですが……お手柔らかに」
「出来たらな」
そう言うと、バートはシモーヌの頬に口づけをし、手を伸ばして、ベッドの近くの灯りを消した。
バートのその問いに、シモーヌの瞳が悪戯っぽく光った。
「そんなに気になります?」
「いや、その……俺が関わった手前、やっぱり多少は気になるのは当然だし、君が大好きだというその兄上と年も5歳違いだというのなら、兄のような気持ちで見守らないと……」
「兄……ですか?」
バートの顔を覗きこみながらそう聞き返すシモーヌの顔には、落胆の色が見てとれた。
「そりゃそうだろう。俺達はまだ会ったばかりだし……」
「ジョルジュさんはそれでも、態度で好きだって表してくれましたよ?」
少しふくれっ面になりながらシモーヌがそう言うと、バートは困った表情になった。
「君は俺に何を望んでるんだ? ジョルジュみたいな対応か?」
「そこまでいかなくても、私がバートさんを好きでいてもいいって許可してくれたのなら、もう少し優しくしてくれてもいいかなとは思います」
「優しく、か?」
「ええ。妹と思って頂いても構いませんから」
その言葉とは裏腹に、その目には涙が溜まってきていた。
「嘘が下手だな」
バートはそう言いながら、太い指でその涙を拭った。
「だって……しょうがないじゃないですか。ずっと本当の父の代わりに私を引き取って、大事に育ててくれた兄上の役に立てるよう、勉学と剣術等に励んできたんです。恋愛なんて、しようとすら思わなかったんです。まずは、兄上の邪魔にならないようにしなくちゃいけないって、そればかり思っていたから……」
「苦労したんだな……」
そう言うと、バートは優しくシモーヌの頭を撫でた。
それが引き金になってしまったのだろうか。彼女は、彼が横になっているベッドの毛布にしがみついて泣きだしてしまった。
「よしよし。色々、我慢してきたんだな」
「でも……今は……」
そう言うと、シモーヌはゆっくり顔を上げた。
まだ目は赤かったが、涙に濡れたその顔は、とても美しかった。
「我慢したくありません」
「シモーヌ……?」
バートが意味が分からず目を丸くすると、彼女は彼に近付き、そっとその頬にキスをした。
「こいつは……」
「兄妹のキスではないつもりです。慣れていないので、上手く出来なかったと思いますが……」
シモーヌはそう言うと、少し離れ、うつむいた。
「おいおい、俺も男なんだぞ? そんな顔して、そんなこと言われたら、我慢出来るものも出来なくなるぞ?」
バートが困った表情でそう言いながら、シモーヌの頭にポンと手を置くと、彼女は彼を見詰めた。
次の瞬間、彼女は彼に抱き寄せられていた。
「バートさ……」
そう言いかけたその唇をバートの唇が塞いだ。
熱く、身体の内側まで熱を持ったかと思う程、熱いそのくちづけに、シモーヌは思わず目を閉じた。
「マジで、これだけで終われそうにない……」
やっとシモーヌを離したバートが、少し困った表情でそう言ったのは、しばらくしてからのことだった。
シモーヌはといえば、まだ熱を帯びたような表情で、倒れそうになるのを彼の手を握ることで、何とか耐えている様子だった。
「はい……」
「はいってなぁ!」
本当に困ったかのように頭を掻くバートの胸にシモーヌはその顔をうずめて、抱きついた。
「あ、痛かったですか? まだ肋骨、治ってないんですよね?」
「それはまだだが……」
そう言うと、彼はシモーヌの手を取った。
すると、どうやったのか、ころりと彼女が横たわり、気付くとその上にバートが乗っていた。
「何とかなるだろ」
「そうなんですか?」
「誘ったのは、そっちだろ」
「そうですが……お手柔らかに」
「出来たらな」
そう言うと、バートはシモーヌの頬に口づけをし、手を伸ばして、ベッドの近くの灯りを消した。