蒼穹‐sora‐
「あの……大丈夫ですか?」



彼女のその言葉に我に返る。



ーー僕は、また壊れてしまったのだろうか。 記憶がない。




「え? あぁ……、はい、大丈夫ですよ」





僕がそう返すと、彼女は「それは良かったです」と笑った。




「そういえば、あの……、あー、お名前お伺いしていいですか?」




彼女は何か話そうとしたのだろうが、僕のことをなんて呼べばいいかわからず戸惑ったようだ。




「あ、純斗(あやと)といいます」




「純斗さんですね、ありがとうございます。
えーとですね……」




彼女は何かを言おうとしたが、壁に掛けられてる時計に目を向けると「あっヤバイ!」と声を上げた。




「すみません、今日のところは失礼していいですか」





予定があったのだろうか。




そういえば、歩いているところを僕が引き止めたんだよな……。




「あっ、全然大丈夫ですよ!
すみません」




「ありがとうございます、ホントすみません。
あの、良かったらメールしてください」




彼女はそう言うと、メモ帳を取り出し携帯番号とメアドを、さらさらと綺麗な字で書き始めた。




「あっはい」



僕はなぜかきょどりながらも彼女からそれを受け取った。




「あっお金」



そう言うと彼女は鞄の中に手を突っ込み、財布を取って自分のアイスコーヒー代を取り出した。







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