蒼穹‐sora‐
「った・・・!」
再びズキンと痛んだこめかみを一旦押さえ、グリグリ回すと伝票を持って立ち上がった。
「いつもありがとね」
レジでマスターが微笑む。
彼は彼女が―花純がいなくなった事を知っている。
「・・・いえ」
きっと今日一緒に店に入って来た彼女―明純を見て、ビックリした事だろう。
「また、お待ちしてますね」
「はい」
僕はコクリと頷くと、店を出た。
さっきまで降っていた雨は上がり、空をふと見上げれば虹が架かっていた。
まるで、僕の今の気持ちの様だ。
僕は足取り軽く、歩を進めた。