蒼穹‐sora‐
《ねぇ、あのマンションの屋上に行ってみない?》




デートも終盤に差し掛かった頃、花純がおかしなことを言う。




《え、は? なんで?》



《なんか高いところからの景色が見たくなっちゃって。
でもそういう展望台とかじゃなくて、ああいう普通のマンションからの景色もいっかなーって》



花純が頬を掻きながら微笑む。




それが可愛かったけど、同時に儚かったことを覚えている。




《そっか、じゃ、行くか!》





……馬鹿か、僕。



スクリーンを見ながら思う。




あの時の僕はホントに馬鹿だった。





花純の発言、あからさまにおかしいだろ。




なんで納得して屋上に行くんだよ……。





行くな、逝くな……。




スクリーンから目を背ける。




もう見てられない。




心が痛い。





花純っ……。















< 32 / 43 >

この作品をシェア

pagetop