蒼穹‐sora‐
「ふふっ、私を殺したのは、純斗くんだからね」




花純は、こちらに顔を向けて、笑ってそう言った。





花純の体が、あちらに向かって傾いていく。




「っ」



僕は、花純の方に手を伸ばした。



が、見事に空を切る。




ーーそして花純は、僕の視界から消えた。




目の前で起きたことが、理解できなかった。




声も出なかった。




僕は、そんな過去を映しているこのスクリーンを観て、今、違和感を感じた。





さっきまで興奮していた脳が、一瞬にして冷静になる。





そして、俯いて手を顎にかけ考える。





あれ、花純は、あんな酷いことを言うか……?






僕が殺しただなんて、僕の人生これからに罪悪感を感じさせるような……。





今、あの時の映像を観て、疑問に思う。





そこで、明純さんの電話の言葉が頭をよぎる。




『あの時、死んだのは、あなたの知ってる花純ではありません』





あれ、辻褄が合う。





この時死んだ人が、花純じゃないのなら……





あれ、じゃあ、




「っっわっ!!」




思考を遮るかのように、激しい頭痛がした。





目を細めながらも、なんだと思ってふとスクリーンを見ると、そこには花純の後を追って飛び降りた僕の姿があった。





くそっ……、あの時の傷が……っ。






激しい痛みで意識を失いそうになったとき、スクリーンに女の人が屋上に立っているのが映った。




あれ、この人、見覚えがある……




ぼやける目でその姿を認識した時、そこで僕は意識を失った。





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