蒼穹‐sora‐
誘導された席に座って、沈黙が続いた。



「とりあえず……、飲み物でも頼みましょうか。
何飲みます?」




彼女にそう言われ、そんなこと聞かれるとは思っていなかったため、一瞬焦った。




「えっ、じゃあ、ホットコーヒーで……」




花純と来ていた時と同じ感覚で、ついホットコーヒーを頼んでしまった。



でも、別に良かったかもしれない。



雨に濡れて冷え切った体をあたためるには。




「店員さん、ホットコーヒー2つで」




近くを歩いた店員を呼び止めて、彼女は注文する。




「ホットコーヒー2つですね。
以上ですか?」




「はい」




「かしこまりました」




店員とのやり取りを終えた彼女は、俯いてふぅ〜と深呼吸をして、こっちを見て笑った。




「ありがとうございます」




僕はそう言うと、彼女は「あ、いえ」と顔の前で手を振った。




「それで、花純さんのことなんですけど……」




ドクン、と大きく心臓が鳴った。




ついに出された、この話題。




「……はい」





僕は静かにこたえると、彼女は真剣な顔をして、真っ直ぐこっちを向いた。





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