漆黒の闇に、偽りの華を
恭は、あたしが新しく持った線香花火にまた火をつける。
あの時、こうやって火をつけてくれたのは確か、お父さんだったっけ。
自分の持った花火が消えれば、潤とあたしで我先にとお父さんの元へ走ったんだ。
「ふふっ。あの頃は……楽しかったなぁ。」
あの頃は、本当に楽しかった。
お父さんがいて、お母さんがいて、そして、潤がいて。
もうあんなに満たされた日々は、二度と来ないのかもしれない。
でも、潤だけは。
潤だけは、失いたくないんだ。
「来ますよ。」
「……え?」
「また、必ずそういう日が来ます。」
恭は、線香花火に目を落としながら優しく微笑んでいる。
「…うん……。」
――――――――――――ポトッ
あたしの持っている線香花火の火種が落ちて、あたしの元にまた闇がやってくる。
でも、それで良かった。
だってあたし今、目に溜まった涙が流れないように必死な顔してる。
「あはは!茉弘またですか?早すぎっ!」
「う、煩いなぁっ!」
あたしは、恭に気付かれないように手で涙を払う。
そうして、また新しい線香花火に火がつく。