漆黒の闇に、偽りの華を
「その時さ、目の前で一瞬火花が散ったかのようだった。
あたしを襲ってた奴等が、次々にぶっ飛ばされていくの。その時はまるでスローモーションで時間が進んでる感じだった。今でもあの時の事は鮮明に覚えてるよ。」
「まさか……」
「そう。それが太一との出会い。」
百合さんが、ニカッと笑う。
あぁ。
いつもの太陽のような笑顔だ。
「その時、太一が呆然とするあたしを見て何て言ったか分かる?」
「え?"大丈夫か?"とか?」
「ブッブー!!?言うわけないじゃん!そんなまともなこと!」
確かに。
言わないよな。
「"何お前!?野良猫みてぇ!!"」
「は?」
「それも、爆笑しながら。」
「…………アホだ。」
「…………アホなのよ。」
「でも、凄い嬉しかった。」
「え?」
「みんなあたしを見て見ぬふりしてたのに、太一は違ったんだ。
真っ直ぐあたしを見て、それで笑ってくれたの。
"あぁ。あたしちゃんとココに存在してるんだ。"って思った。そしたら何か泣けてきてさ。
それから、まぁ色々あって今に至るわけだけど、あたしは今も、あの太一の真っ直ぐあたしを見てくれた目が忘れられない。」
あぁ。
そうか。
百合さんは、その瞬間恋に落ちたんだ。