漆黒の闇に、偽りの華を
「それじゃ、行ってきますね。」
「う、うん。行ってらっしゃい。」
すっかり夜も更けて、倉庫の外は夏の虫が甲高い音をならしていた。
天気も良好。
空には、まだ満月になるかならないかくらいの月が光を放ってる。
あたしと百合さんは、恭達を見送る為に倉庫の入り口まで来ていた。
幹部のみんなは、いつもとは違う姿。
白の繋ぎのズボンをそれぞれ履きこなしてる。
恭は繋ぎを腰で縛って履いていて、上は黒のTシャツ。
眼鏡は、喧嘩になると危ないからかコンタクトにしてる。
何か、いつもの恭とは全然違う印象過ぎて……戸惑う。
いつものちょっと長い髪は後ろに流してるし……うん。ちゃんと不良に見えなくもない。
「どうしました?」
「いや、何でもないです。」
「えっ。何で敬語っ?」
恭の頭に"?"が浮かんでる。
このすっとんきょうな顔を見てると、やっぱりいつもの恭だ。
安心する。