漆黒の闇に、偽りの華を
「立てない?」
「う……あ……ごめん。まだ腰が抜けてて……。」
はっ!
そういえば!!
「恭!!手はっ!?」
さっき、あたしに向かってくるナイフを止めた時に怪我したはず!!
「大丈夫。少し刃が掠めただけだ。」
恭は、恭の怪我した手に触れるあたしの手をさりげなく払う。
傷は血も止まっていたし、確かに深くはなさそう。
良かった……。
ただ、
……
怒ってる?
手を払われたくらいで、何でこんなに胸の奥がズキズキするんだろう?
恭のいつもと違う低い声が、あたしの不安を余計に煽る。
「頬……。痛い?」
恭が、あたしの頬の傷に触れようとする。
でも、あたしの体がビクッと強張る。
恭もあたしに触れるか触れないかの所で手を止める。