漆黒の闇に、偽りの華を
あたし、少し今の恭が怖い……。
今、あたしの目の前に居るこの恭は、どんな風にあたしに触れるの?
どんな言葉を発するの?
見送った時のほんわかした恭とは違う。
目の前に居るのは、容易に不良グループを全滅させた、煌龍総長の恭。
「……恭。ごめんなさい。あたし、恭達の足手まといになった。煌龍の弱味なんかにはならないって言ったのに……本当にごめん。浅はかだった。」
「…………。」
呆れてるよね。
いきなり煌龍に飛び込んで来て、無理矢理側に置いて貰って、挙げ句にこのざま。
一歩間違えれば、ここに居る誰かがただでは済まなかったかもしれない。
あ。
やだ。
今更怖くなってきた。
体が震える。
「茉弘。」
止まっていた恭の手が、あたしの頬に触れる。
「俺は、茉弘がどんなに足手まといになっても、切り捨てたりしない。」
恭の声は依然として低いままで、雰囲気もいつもとは違うけど、とても穏やかなものだった。
怖くなんかない。
ただ、じんわりとあたしの胸を熱くする。
涙が、込み上げてくる。
「無事で、良かった。」
恭の腕の中に包まれる。
優しく、でも力強く、恭はあたしを抱きしめる。
もう涙は堪えられない。
「……っ恭……恭……。」
いつもと一緒の恭の香り。
いつもと一緒のあたしを撫でる優しい手。
何も変わらない。
どんな恭だって、あたしの大好きな恭そのものだから。