漆黒の闇に、偽りの華を
「あいつらは、まぁなんだかんだ普通の学校ですからね。あんな点取りゃ夏休みは普通に補習させられますよ。
それに比べて太一は……。」
恭がブツブツ文句を言っている。
「デートかぁ。 」
いいなぁ。
何だかんだ仲がいいよなぁ。
あの二人。
ちょっと、羨ましい。
「茉弘は、何してたんですか?」
恭が、テーブルの上のノートや教科書を指差して言う。
「あぁ。夏休みの宿題やってた。
ちょっと休憩してたら、いつの間にか寝ちゃってたけど。」
「ふーむ……。」
と言いながら、恭はあたしのノートをペラペラ捲りだす。
「やっぱり颯風ですねぇ。なかなか難易度が高い。」
「緑高の人に言われると嫌味にしか聞こえないけどね。」
「また、そういうひねくれた事を言う~。あ。これ、間違ってますよ。」
「ほらっ!嫌味じゃん!!」
「ははっ!」
さっき見た夢が、少しも望んでいない事だなんて言ったら、嘘になるかもしれない。
恭があたしと同じ気持ちで居てくれたら、嬉しくない訳がない。
でも、こうやって恭と笑っていられる。
それだけでも、あたしにとっては凄く尊い事なんだ。
あたしは、今この瞬間も恭を裏切っている。
いつかは恭の敵に回る。
でも神様。
どうか今だけは。
恭を好きだと思っては駄目ですか?