漆黒の闇に、偽りの華を
聖也さんは、心底意味が分からないといった顔をしてるが、恭はそれっきり何も話さなかった。
テーブルに頬杖を付いて、どこか遠くを見ている恭の顔は、あたしには何だか寂しそうに見えて、胸が締め付けられた。
「もうそれ以上突っ込むな聖也。これ以上うちの総長の機嫌が悪くなるのは困る。」
太一が、さっきとは打って変わって真剣な顔で聖也さんを宥める。
きっと太一には、恭の寂しそうな顔のわけが分かっているんだ。
「……分かったわよ。
ただ、恭。どちらにしろ、ケジメをつけなさい。あんたの噂は、煌龍外だけの話じゃない。煌龍内でも広まってるの。"御披露目"をしていない女の影。これが、煌龍内の不信感に繋がる。
あんたは、頭良いんだからもう分かってるんでしょ?
只でさえ反乱因子が出ている昨今、不信感は内部分裂を煽る。」
恭は、カタンという音を立てて椅子から立ち上がると、幹部室のドアの前に行きドアノブに手を掛ける。
そして、ふっと笑って聖也さんを見る。
「ご忠告、有り難く受け取っておくよ。」
ドアを開けて聖也さんに出るように促す。
「だけど、お前はお前んとこの心配だけしてな。」
聖也さんは、顔を真っ赤にして怒り出す。