漆黒の闇に、偽りの華を
「もし例えそうなったとしても、それは恭のせいじゃないじゃない。」
「……。」
「恭と一緒に居ることを望んだ、その子の責任だよ。」
恭は黙って一点を見詰めている。
「お待たせしました~♪」
柚菜さんが、あたし達が注文したものをテーブルの上に広げていく。
「他に注文はない?」
「はいっ!ありがとうございます!頂きます!」
柚菜さんは、ニッコリ笑うと恭には見えないように小さくガッツポーズをしてみせる。
『頑張れ』って、声が出ないように口を動かしながら。
あたし達の話、聞こえてたんだろうか。
恭は、何かを考えているようで、何も話さず静かにコーヒーを一口口にする。
「恭食べよ?冷めちゃう。」
「え?あ、うん。そうですね。」
やっぱり、聞いちゃいけなかったのかな。
参ったな。
これじゃ、折角のご飯も味が感じないや。
「俺が、小学生になって間もない頃に、母さんが死んだんです。」
――――カシャン。
あたしは、恭の突然の告白に、持っていたフォークを落とす。
驚いて恭を見ると、恭は食べる手を止めて、フォークを見詰めている。
「ある男に刺されそうになった俺を庇って、刺されたんです。」
恭を……庇って?
刺されたって…そんな…。
「犯人は、俺の親父に……恨みがあったらしくて、一人息子の俺を狙った犯行でした。」