漆黒の闇に、偽りの華を


――――――グイッ!



掴んでいた腕を引っ張り、あたしをどこかに連れて行こうとする恭。



柚菜さん、理さんが居るカウンターを通り、その奥の扉から中に入る。



「ちょっ!恭!?」



中に入るとバックヤードになっていて、更にその奥に進むと、小さな会議室みたいな部屋……。



何でこんな所に会議室?



そんな事を思っていると、その中に引っ張り込まれる。



「恭!どうし……」




―――――――え?




あたしは、部屋の一番奥の壁に背中を付け、その壁に恭が片手を付いてあたしを見下ろす。


恭の様子は、いつもの優男なんかじゃなくて、"男の人"その者の顔。


「……恭……。」


沸き上がる恋情。


今まで、お互いが知らぬ振りをしてきた気持ちを、こんなに近くに感じる。

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