漆黒の闇に、偽りの華を

違うんだって。


遠慮してるとか、そういうんじゃなくてさ……


「ここが……茉弘んちですか……?」


「う、うん。一応……」


ほら。


だから言ったのに。


あたしは、恭の絶句している顔を睨み付ける。



あたし達は、寂れた塗炭屋根のアパートの前に立っていた。

表札には"桜荘"と名前だけは立派で、表札のある塀ですら崩れかかっている。

正直、あたし意外住んでるのかどうかも分からない。

相当なボロアパートだ。


「セキュリティも何もあったもんじゃない…………。
女の子が一人でこんなアパート!だめですよっ!!すぐに引っ越して下さいっ!!」


あまりに血相を変えてそう言うもんだから、思わず吹き出す。


「あはは!恭どこのお父さん??」


「笑い事じゃないですって!何かあったらどうするんですか!?」


「何もないし。何かあっても恭には関係ないでしょ?
仕方ないのよ。お金ないから。
親戚が渋々出してくれてる少しのお金で遣り繰りしてるの。贅沢は言えない。」


恭は、あたしを見たまま黙る。


その顔からは何も読み取れない。
< 43 / 200 >

この作品をシェア

pagetop