漆黒の闇に、偽りの華を
違うんだって。
遠慮してるとか、そういうんじゃなくてさ……
「ここが……茉弘んちですか……?」
「う、うん。一応……」
ほら。
だから言ったのに。
あたしは、恭の絶句している顔を睨み付ける。
あたし達は、寂れた塗炭屋根のアパートの前に立っていた。
表札には"桜荘"と名前だけは立派で、表札のある塀ですら崩れかかっている。
正直、あたし意外住んでるのかどうかも分からない。
相当なボロアパートだ。
「セキュリティも何もあったもんじゃない…………。
女の子が一人でこんなアパート!だめですよっ!!すぐに引っ越して下さいっ!!」
あまりに血相を変えてそう言うもんだから、思わず吹き出す。
「あはは!恭どこのお父さん??」
「笑い事じゃないですって!何かあったらどうするんですか!?」
「何もないし。何かあっても恭には関係ないでしょ?
仕方ないのよ。お金ないから。
親戚が渋々出してくれてる少しのお金で遣り繰りしてるの。贅沢は言えない。」
恭は、あたしを見たまま黙る。
その顔からは何も読み取れない。