漆黒の闇に、偽りの華を

それから、ちょっとふて腐れたような顔をして、持っていたスマホを取り出す。


「貸してください。」


恭が右手を差し出す。


「何を?」


「スマホ。」


「?」


「俺の連絡先登録しますから、何かあったらいつでも連絡下さい。バイクかっ飛ばして来ますから。」


「えー?何かあって、10分もかかったら間に合わないよー?」


「5分で来れますよ。」


なにそれ。

さっきのスピードでも、まだ手加減してたってこと?


恭と目が合う。

いつになく真剣な眼差し。

なぜか、急に心臓が早く脈を打つ。


「……事故んないでよ……。」


その眼差しに負けて、渋々スマホを恭の右手に渡す。


「関係なくなんか……ないですからね。」


恭があたしのスマホをいじりながら、独り言のようにそう呟いた。



胸がちくんと痛んだ。


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