漆黒の闇に、偽りの華を
その後すぐ、恭とは別れた。
でも、胸の痛みは止まない。
玄関のドアを開けて、中に入る。
真っ暗な部屋。
古い家の臭い。
熱帯夜の熱が籠って、むわっと暑い。
玄関に座り込み、ちくちく痛む胸の辺りを強く押さえる。
こんな気持ち無くなれっ!
その時、ポケットの中のスマホが震える。
ディスプレイには"潤"の文字。
通話のマークをスライドさせる。
「…………潤?うん。上手くいったよ……。」
あたしは、この確かな胸の痛みに無理矢理蓋をした。