漆黒の闇に、偽りの華を


――――ガサササッ!


「あーまたかい。次は騙されませんよー。」


そう言葉を発してからはっと息を飲む。



違う。

猫なんかじゃない。


何かこう、もっと大きなものが近づいてくるような、ザッザッと砂利を擦るような足音が聞こえる。


人…間……?


「なーにを騙されないって?」


あたしの目の前に、突然男の顔が飛び出してきて、


「ひっ!」


悲鳴を上げそうになると、その男の手があたしの口を乱暴に塞ぐ。


「悲鳴なんて上げんなよ。ただでさえ、さっきの悲鳴でこっちは警戒されてんだ。黙ってろ」


ヤバイ。

あたし、絶対にただじゃ済まない。

だってこの人……ナイフ持ってる。


それに、"あの人達"と同じ目してる。


「……っ…!」



誰か………っ!!




「こらこら。乱暴は駄目ですよ。」




いきなり辺りが、眩しいくらい明るくなる。


咄嗟に手で光を遮って、必死に目を開けようとしていると、あたしにナイフを突き付けていた男が、勢いよく蹴り飛ばされ吹っ飛ぶのを見た。
< 5 / 200 >

この作品をシェア

pagetop