漆黒の闇に、偽りの華を
暑い。
汗が止まらない。
いや、これは完全に冷や汗も混ざってるな。
「ハァハァ……」
暑さと寝不足と走ったせいで、息が上がる。
でも、漸く人目の付かない所まで来て安堵する。
「運動不足じゃないの?茉弘。」
「う……うるさいなっ。あたしにも色々あるのよ!」
一先ず息を整えて、潤に向き直る。
「何であたしの学校になんか来るわけ!?あんた目立つの分かんない!?」
潤は首を傾げて、全く分かってないといった顔をしてみせる。
潤が目立つポイント其の一。
見た目。
潤の顔は特別整っている。
そんじゃそこらのアイドルよりよっぽど綺麗で中性的な顔立ちをしていて、背も180以上。
髪の毛も元々色素が薄くてふわふわで、女の私から見ても羨ましいと思う。
どこを歩いても女の子が振り向き、頬を染める。
そして、潤が目立つポイント其の二。
潤は"鷹牙(おうが)"の副総長ということ。
"鷹牙"は、"煌龍"に並ぶトップクラスの勢力を持つ暴走族。
あたしの住んでいる辺りでは、ほとんど知らない者がいない。
特に潤はそのビジュアルのせいもあって、みんなが顔を知っている。